ずいぶん古くなってあちらこちらに修理のあとがあるぬいぐるみのくま。
名前はマーマーです。
マーマーはあっこが赤ちゃんの時、お母さんの友達が持ってきてくれました。
友達はあっこのベビーベッドをのぞき込み、「くまさんですよ」と言ってあっこに手渡しました。
あっこは「アー」とか「マー」とか喋りはじめていた頃だったのでくまの「ま」だけ言えました。
「マーマー」
その時、マーマーという名前がつきました。
人形のメアリーがしばらくの間、飾り棚の上に置かれたのとは違って、マーマーはすぐにあっこの手の届くところに置かれました。
あっこは、マーマーのさわった感じがとても気に入りました。
マーマーの鼻や耳をくねくねなで回していると、なぜか気分が落ち着きます。
マーマーを目の前に持っていくと、今まで泣いていたあっこが急に泣きやみ、にこにこすることがわかったお母さんは、あっこを寝かせるときやあっこが不機嫌なときマーマーを使いました。
そんなことを繰り返しているうちにあっこはマーマーなしでは眠れなくなりました。マーマーを持っていないとあっこは機嫌が悪くなります。
出かけるときは絶対に忘れてはいけません。
もしマーマーがなくなったら、大変なことになるわ!
お母さんが何とかしなくちゃと思いはじめたとき、マーマーの鼻がとれました。あっこがくねくねしすぎたのです。お母さんがあわてて糸で縫いつけると今度は耳に穴があきました。あっこは穴に人指し指を突っ込んで笑っています
「もうマーマーとお別れしようね」と言って、マーマーを引き離そうとするとあっこは大泣きするばかり。
お母さんはあきらめました。無理に取り上げてもいやな思いをさせるだけ。そんな風に思ってひたすらマーマーの修理を続けることにしました。
そのうちあっこはマーマーより興味のあるものをみつけたり、お友達ができてぬいぐるみを抱いているのが恥ずかしくなったりして、昼の間はマーマーがなくてもいいようになりました。
しばらくして、夜もマーマーでなしで眠れるようになりました。
今、あっこはそんな赤ちゃんの頃のことなんか覚えていません。でも、このぼろぼろになったマーマーを捨てる気にはなれないのです。 |